皮膚にできた赤い斑点は病気?
皮膚の表面には表皮、その下には真皮があり、真皮には多くの毛細血管が存在します。皮膚トラブルが発生すると、血管内で炎症物質が放出され、問題解決を試みるために毛細血管が活発化し、赤い斑点(紅斑)が現れます。
一方、アレルギーによる蕁麻疹の症状である膨疹は、紅斑と似ていますが異なります。これはヒスタミンの作用で毛細血管から一時的に血液成分が漏れた状態で、数時間から24時間以内に消失します。
皮膚に赤い斑点ができる
原因と病気
皮膚トラブルの原因は多岐にわたりますが、赤い斑点が現れた時に疑われる病気をご紹介します。
炎症・アレルギーなどによる
赤い斑点
炎症やアレルギーが原因で赤い斑点が現れる疾患はたくさんあります。症状が続く場合や気になる時は、早めに当院へご相談ください。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返される皮膚疾患です。皮膚のバリア機能が低下すると、アレルゲンなどの刺激で炎症が生じます。さらに、かきむしることでバリア機能が悪化し、症状が悪化することがよくあります。
接触皮膚炎
接触皮膚炎は、刺激物やアレルゲンに触れることで発症し、赤い斑点、かゆみ、痛みを伴うことがあります。重症化すると湿疹や水疱ができ、肌が荒れることもあります。手の平のような厚い皮膚には症状が出にくいものの、刺激物が他の薄い部位に触れると、そこにも炎症が起こる場合があります。
「刺激性接触皮膚炎」では、痛みが主な症状で、軽症では赤い斑点や小さな水疱、角質の剥離程度ですが、重症になると激しい痛みと大きな水疱を伴うことがあります。
「アレルギー性接触皮膚炎」では、かゆみを伴う赤い斑点が特徴で、症状が広がる場合があります。発症までに数時間から1日ほどかかることが多いです。
どちらのタイプでも、炎症が悪化すると色素沈着を残す可能性があるため、早めに皮膚科での診察と治療を受けることが大切です。
湿疹
湿疹は、紫外線や摩擦などの物理的刺激、洗剤や薬品による化学的刺激、アレルゲン、感染などが原因で起こる炎症の総称です。症状として、赤い斑点、かゆみ、痛み、乾燥、さらには化膿する場合もあります。
突発性発疹
生後6ヶ月~2歳頃に多いウイルス性発疹で、突然の高熱が数日続いた後、解熱とともに腹部や背中に赤い斑点が現れるのが特徴です。
薬疹
薬によるアレルギー反応で赤い斑点などの症状が現れることがあります。発症は服用後すぐではなく、数日~数週間後に起こる場合もあります。発熱や肝臓・腎臓の数値異常を伴うこともあります。
帯状疱疹
免疫力の低下によって、体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することにより発症します。体の片側に帯状の赤み、水ぶくれ、ただれが生じ、痛みを伴うのが特徴です。
掌蹠膿疱症
扁桃炎や虫歯、副鼻腔炎、中耳炎、金属アレルギーなどが原因で、手の平や足裏に左右対称の赤い斑点が現れます。かさつき、膿を伴う発疹、かゆみを伴うことがあり、症状が繰り返されるのが特徴です。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
運動後にかゆみのない赤い斑点が現れた場合、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われます。小学生から中学生に多いアナフィラキシーの一種で、小麦など特定の食品を摂取後の運動で発症します。症状は腹痛、吐き気、呼吸困難などがあり、重症化することもあります。
ジベルばら色粃糠疹
ウイルス感染後に現れる腹部や背中の赤い斑点で、他の人にうつることはありません。多くは自然に治りますが、他の病気との鑑別のため、皮膚科を受診しましょう。
IgA血管炎
皮膚の細い血管に炎症が生じる病気で、幼児から中学生に多く見られます。太ももやふくらはぎにかゆみのない赤い斑点が現れ、風邪をひいて1~3週間後に発症することが多いです。微熱、倦怠感、関節痛、腹痛などを伴うことがあります。大人にも発症することがあり、その場合は重症化するリスクが高くなります。
日焼けによる炎症
日光を浴びた後、腕や胸元にかゆみを伴う赤い斑点やブツブツが現れる「多型日光疹」は、日光に当たってから30分~数時間以内に症状が現れますが、翌日以降に発症することもあります。顔には症状が出にくく、主に10代~30代の女性に多く見られるのが特徴です。
血管の拡張による赤い斑点
皮膚の下にある毛細血管が拡張することで赤い斑点が現れる場合があります。
老年性血管腫
老人性血管腫は、毛細血管が増えることでできる良性のできもので、赤いほくろのような見た目から「赤ほくろ」や「ルビースポット」とも呼ばれます。1~5mm程度の大きさで、主に顔や胸元、背中、腕など上半身に多く見られますが、全身どこにでも発生する可能性があります。20~30代の若年層にも見られることがあり、年齢とともに数が増える傾向があります。
毛細血管拡張症
毛細血管拡張症は、皮膚の真皮浅層にある毛細血管が持続的に拡張し、肉眼で確認できる状態を指します。皮膚が赤く見える点は紅斑と似ていますが、炎症を伴わないのが特徴です。そのため、皮膚炎がない場合にも見られ、薬で改善することはありません。この症状は、個人の血管の形態や加齢による皮膚変化のほか、肝硬変や肝機能障害、妊娠に関連して現れることがあります。
赤い斑点はかゆい?
かゆくない?皮膚の
「赤い斑点」の症状
赤い斑点やかゆみを感じたら、湿疹、突発性発疹、帯状疱疹などの皮膚疾患が考えられます。また、必ずしもかゆみを伴わないアレルギー反応可能性があるため注意が必要です。
虫刺されのように問題のない場合もありますが、湿疹のように赤い斑点から水ぶくれ、かさぶたになるなど多様な経過をたどる場合もあり、放置すると悪化する可能性もあります。
症状が続く場合や、気になる場合は、お早めに当院までご相談ください。
赤い斑点ができた場合の治療法
赤い斑点ができる原因を確認した上で、それぞれの症状・疾患に合った治療方法をご提案いたします。
外用薬
ステロイド外用薬や抗菌・抗真菌薬を使用し、症状や部位に合わせて、軟膏、クリーム、ローションなどを使い分けます。
内服薬
全身に湿疹が出た場合はステロイドの内服が必要になることがあります。かゆみなどには、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が一般的に処方されます。
凍結療法・切除術・
レーザー治療
老人性血管腫では、液体窒素で急速に凍結させて破壊する凍結療法や、メスやパンチで患部をくり抜いて縫合する切除術、赤いもののみに反応する色素レーザーを患部に照射するレーザー治療を行います。
原因薬の中止
薬疹の場合は、原因となる薬剤を中止すれば数日で良くなることが多いです。目や口、陰部などの粘膜に症状が出たり、発熱を伴ったりする重症薬疹では、ステロイドの内服や点滴を行い、それでも不十分と判断した場合は、免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法、血漿交換療法などの追加治療を考慮します。